東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野 東北大学 腫瘍内科

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教授挨拶

「新任教授挨拶」(艮陵新聞2003年12月12日発行より)

平成15年6月1日付けで加齢医学研究所癌化学療法研究分野と、東北大学病院腫瘍内科を担当することになりました。就任にあたり分野の紹介も兼ねてご挨拶を申し上げます。私は仙台市生まれで、本学医学部を昭和59年に卒業後、大学院医学系研究科に入学すると同時に、仙台厚生病院と抗酸菌病研究所附属病院で主に進行・再発悪性腫瘍の臨床一般と癌化学療法を勉強してまいりました。抗研時代は、主に抗癌剤による薬物療法の薬効・薬理の基礎的研究から臨床試験まで、さらに化学療法の効果判定などがんの診断・治療に関わる研究に携わりました。癌化学療法研究分野の前身は昭和38年に開講された抗酸菌病研究所・臨床癌化学療法研究部門ですが、初代教授の斉藤達雄先生はその2年前に開設された癌化学療法部門の初代教授に就任されましたので、2代目の涌井昭先生、この3月に退官された3代目の金丸龍之介先生の時代を含め研究室は40年の歴史があり、私はその後半約20年間在籍していることになります。改組による加齢医学研究所設立により現在の癌化学療法研究分野になり、分野の主要な研究テーマは従来の抗癌剤投与法開発研究から、難治癌の発生・進展の分子機構解析や分子診断・治療法の開発研究にシフトしてきました。時の流れとともに研究テーマが変遷することは当然のことですが、私の場合、大学院時代に「がん遺伝子の発現制御と細胞増殖抑制」という研究テーマでしたので、研究室内では最も早い時期から現在につながる研究領域に関わることができ、今思えば幸運でした。とは言え研究はなかなかうまくいきませんでした。結局、「プロスタグランジンA2によるヒト白血病細胞株HL-60におけるc-myc発現抑制と細胞増殖抑制効果(抗酸菌病研究所雑誌 40: 283-293, 1988、基礎論文Cancer Res. 48: 2813-2818,1988)」を博士論文にしましたが内容は十分ではなかったと思います。その後、NIH-JFCR交換留学制度を利用し、野田哲生先生の紹介でボストンのMGHがんセンターの分子遺伝学教室に留学し、分子診断の基礎を勉強する機会に恵まれました。分子診断法に関しては、これまでに出芽酵母を用いる遺伝子機能診断法の開発や、家族性の大腸癌や乳癌をはじめ各種がん関連遺伝子の変異検出とその病的意義の機能評価について臨床研究を含めて取り組んできました。現在、遺伝子機能診断法をさらに発展させ、より包括的ながんの分子診断系の確立を目指して、網羅的変異解析、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析、タンパク質構造・機能相関解析に取り組んであります。また、がんに特異的な遺伝子産物の発現、翻訳後修飾を診断に応用するための網羅的タンパク質発現解析研究を準備中です。

がんの分子診断は、最近まで発癌機構解明のための研究や、遺伝性腫瘍や特殊な癌のDNA診断などに限定されておりましたが、ゲノム科学の進歩と最新技術の出現により、一部のがんでは病型分類のほか、予後の予測、転移予測、さらには抗癌剤・放射線治療効果予測などの研究が可能になってきました。私たちも、腫瘍外科(大内教授)との共同研究で乳癌の予後・悪性度診断に関する研究に取り組んでおります。また、抗癌剤の多剤併用療法に関する治療効果予測診断法の開発や、がんの分子画像診断にも取り組んでおります。

一方、がん関連遺伝子の機能評価に関しては、タンパク質の機能、構造、変異相関について興味を持っております。例えばp53がん抑制遺伝子産物に関しては網羅的ミスセンス変異解析を行い、がんの分子疫学的研究に発展させるべく国外研究者と共同研究中です。また、このp53に関しては、変異p53機能回復薬剤開発、アミノ酸置換導入による改変p53による遺伝子治療法の開発、p53経路の治療標的探索など、p53に関連する分子治療法開発に取り組み、将来、このような基礎的研究から臨床研究に展開できる日を夢見ております。この6月からは同時に病院の腫瘍内科長を担当しておりますが、腫瘍内科では、がんの薬物療法を中心にして進行・再発消化器悪性腫瘍、悪性リンパ腫、各種肉腫、原発不明癌などの診療を担当しております。私たちは以前より外来化学療法に力を入れてまいりましたが、最近では他の診療科においても外来での化学療法のニーズが高まり、本年度中に外来棟5階の腫瘍内科診察室・内視鏡室、共通処置室の一部を改修して外来化学療法センター(仮称)が開設される予定になっております。

今後は、他診療科や薬剤部、看護部と協力しながらセンターの運営を軌道に乗せたいと考えております。診療に関しては、このほかにもがんの薬物療法に関する医師主導の臨床試験、メーカー主導の治験、家族性・遺伝性大腸癌・乳癌の遺伝子診断、遺伝カウンセリングにも取り組んでおります。このような先進的な医療を開発研究するにあたっては、インフォームドコンセントはもとより、より社会的合意が得られるような科学的、倫理的な妥当性が求められる時代となってきております。特に、関係省庁や学会・研究会が示す各種指針(ガイドライン)の数は年々増加してきており、それらの理解と、現行のまたは将来の研究計画にどのように反映させ、整合性を保つかに非常に負担が増してきております。がんの臨床研究を推進していくためには、われわれ医師・研究者の努力が必要ですが、特にがんの治療薬開発に関しては、新GCP以降、規模や人員の問題から研究室単位ではなかなか対応しきれない状況になってきました。とくに抗癌剤開発の場合は治験や医師主導型臨床試験を含めて、研究段階では重篤なものも含む有害事象が必発であり、また多くの場合主目的または副次的目的が生存期間の延長であることから観察期間がく、より専門性の高いコメディカルスタッフ(例えばclinicalresearch coordinator, data manager, oncology nurse, cancer pharmacistなど)を確保し、コストも含めた効率のよいシステムを確立することが必要です。今後は研究をいかに臨床の場に展開していくか「トランスレーショナルリサーチ」を見据えて、同時に臨床研究に関わる体制も整備していかなければならないと考えております。
この点に関しましては共通の認識をお持ちの他診療科や学内関連分野の皆さんと協力しながら前身したいと考えております。

現在、教官は分野に3人、腫瘍内科に4人の計七人で平均年齢は30歳台と若い研究室です。研究室は加齢医学研究所研究棟4階、外来は病院外来棟5階、病棟は新西15階(19床)で診療に従事しております。現在、大学院生が6名在籍しておりますが、今後も一層大学院生の指導に力を入れ、将来、市中病院で腫瘍内科医として活躍できる人材を育成したいと考えておりますので、学生諸君や研修中の若い医師の方はご遠慮なく研究室に御連絡ください。

艮陵新聞(2003年12月12日発行):新任教授挨拶より
石岡千加史

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