東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野 東北大学 腫瘍内科

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「(特集)腫瘍内科ー日本の新しいがん診療の体制を目指してー」
(モダンフィジシャン誌 25: 1205, 2005より)

わが国では今、明らかに腫瘍内科医が不足している。腫瘍内科医のニーズが急に高まってきたのに現実にはわが国には腫瘍内科医はほとんどいないからである。その理由はこれまでのわが国の医学教育において臨床腫瘍学が軽視されてきたためである。

しかしながら、進行がんの薬物療法の開発研究や治療成 績において欧米との格差が認められるに至り、国民の強い期待を背景に、ようやく国もがん薬物療法の専門化の必要性を認識するようになった。本特集を企画した時期には、がん治療に関わる専門医制度のあり方について大きくマスコミにも取り上げられ、国民の関心事となった。現時点では、日本臨床腫瘍学会の「がん薬物療法専門医」制度と腫瘍内科は表裏一体の関係にあり、欧米並みのがん化学療法のエキスパートを育成するのが大きな目標である。

一方、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会が共同でカリキュラムを作成する予定である「がん治療認定医」は、より基本的な臨床腫瘍学の知識を備えた臨床医を育成することを目指し、外科医、婦人科医、泌尿器科医など臓器別、診療科別がん専門医の啓蒙や初期教育が目標になると予想される。腫瘍内科医を目指す若手医師にがん治療、とくにがん薬物療法の専門性を高めることの重要性を十分理解していただくために、本企画では、最初に日本臨床腫瘍学会から理事長の西條先生、同学会の専門医審査部会長である田村先生(福岡大学 第一内科)、教育プログラム部会長の福岡先生(近畿大学医学部腫瘍内科)にわが国における腫瘍内科医、臨床腫瘍医の関係と専門医制度の方向性について解説していただいた。わが国の医学教育に臨床腫瘍学講座が設置されていないことや内科学に臨床腫瘍学の分野がない状況で、将来腫瘍内科を担う人材をどのように確保していくか、日本のがん医療は人材育成の点で今まさに岐路に立たされている。

このような状況下で、欧米における臨床腫瘍学の卒後研修システムとわが国の医学教育の違いを認識し、そして日本臨床腫瘍学会が目指す日本独自のがん薬物療法専門医とは何かをこの企画の前半で知っていただきたい。

また、本企画では腫瘍内科が担当する臓器別日常診療、腫瘍内科医に今最も期待されているがん化学療法のマネージメント、腫瘍内科医には避けて通れない終末期医療の実践、について各分野のエキスパートに概説していただいた。この企画は是非、初期研修中の若い医師や出来れば医学部の学生にも読んでもらいたい。そして、読者の中から一人でも多くの方が将来、腫瘍内科医を目指してほしいと切に願っている。また、病院を運営する立場にあるドクターにも今後のがん治療の実践を考える上で腫瘍内科医の必要性を感じ取っていただければ幸いである。

平成17年9月(モダンフィジシャン誌 25: 1205, 2005より)
東北大学加齢医学研究所・癌化学療法研究分野
石岡千加史

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