東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野 東北大学 腫瘍内科

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教授挨拶

川上尚人教授

このたび東北大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学分野および東北大学病院腫瘍内科の教授を拝命いたしました。本教室は1969年に初代教授である斉藤達雄先生の指導のもと、東北大学抗酸菌病研究所の臨床癌化学療法部門として設立されました。その後、涌井昭先生、金丸龍之介先生、石岡千加史先生と続く教授陣により、長年にわたり日本の臨床腫瘍学を牽引してきました。研究分野としては1993年、抗酸菌病研究所が加齢医学研究所に改組されたことに伴い、臨床癌化学療法部門は「腫瘍制御研究部門癌化学療法研究分野」と改名、そして2010年にはさらに「臨床腫瘍学分野」に変更されています。2020年には、医学系研究科・医学部に「臨床腫瘍学分野」が新設されました。診療科としては、1975年に抗酸菌病研究所附属病院「化学療法科」として始まり、2000年に加齢医学研究所附属病院の東北大学医学部附属病院への統合を契機に「腫瘍内科」に改称されました。このような歴史と伝統のある教室・診療科を担うにあたり、重責を痛感するとともに、身の引き締まる思いです。

東北地方は広大で自然豊かな地域であり、その特性から、医療体制を充実させるには他の地域以上に工夫と時間が必要とされることがあります。臨床腫瘍学の分野は日進月歩であり、常に新しい知識や治療法、技術を習得し続けることが求められます。私たちは、その変化に臆することなく挑戦し、積極的に新たな情報や知見を取り入れる環境を整えていきます。私たちの目標である「がんになっても不安のない社会」を実現するためには、患者さんがどこに住んでいても、最新の医療に迅速にアクセスできることが不可欠です。それには、単に新しい検査法や治療法を導入するだけでなく、情報格差を解消し、医療システム全体を強化することが重要です。私はいわゆる「地方」における腫瘍内科の発展こそが、日本のがん医療の未来を切り開く大きなカギだと考えています。私たちはこの目標に向け、今後も尽力してまいります。また、さらに、情報格差は、地理的な要因だけでなく、医療従事者間の連携不足や患者さんとの円滑なコミュニケーションが取れないことによっても生じます。正確な情報の共有と最善の判断を支援する意思決定支援も、私たちの重要な責務の一つです。

臨床医にとって最も重要な能力は、「患者さんから学ぶことができるかどうか」だと私は考えています。患者さんは日々の闘病を通じて、私たちに数多くの課題を投げかけています。患者さんと接するうちにそうした課題に気づき、それに敏感に反応できる医師を育てることが、私の使命です。私たちは、患者さんからの問題に真剣に向き合い、課題を抽出し、それを研究として発展させ、解決策を見つけることで臨床現場を改善し、その成果を患者さんに届ける―「患者さんから学び、それを患者さんに還元する」「Clinical QuestionからPractice Changingへ」―この循環こそが私たちの原動力であり、常に前進し続ける理由です。

そしてその先に目指すところは、「世界一臨床開発力のある腫瘍内科」です。基礎研究からTR、そして臨床研究まで一貫して「患者さんに届ける」というゴールを強く意識し、新規治療や薬剤の開発に積極的に取り組み、国際的な競争力を持つ存在へと成長すべく、日々挑戦し続けます。東北大学の「研究第一」「門戸開放」という建学の理念に基づき、世界最高水準の研究・教育を追求するとともに、その成果を社会が直面するがん治療の課題に役立て、広く社会に還元していきます。

私たちは、この地域に根差した医療提供を継続しながら、日本全体、さらには世界レベルでの臨床腫瘍学の発展に貢献していきます。このような理念に共感し、汗を流してみたいという若い医師の挑戦を心から歓迎します。私の使命は、臨床腫瘍学を志す人全員が自らの能力を最大限に発揮し、さまざまな課題に取り組む中で、のびのびと成長できる環境を提供することです。一人ひとりが成長することで、教室全体が活性化し、さらに次のステップへ進んでいくという良い循環を生み出したいと思います。私自身まだまだ未熟な身であり、医局の仲間たちと共に成長し続け、共に学び、共に高みを目指していきたいと考えています。

新しいがん医療の未来を切り開き、より多くの患者さんに希望を届けていくために、皆さんの積極的な参加をお待ちしております。

東北大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学分野
東北大学病院腫瘍内科

川上尚人

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