東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野 東北大学 腫瘍内科

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対象疾患

食道がん

我が国においては年間約2.6万人の発症者があり、その8割以上が男性です(厚生労働省「全国がん罹患数 2016年速報」)。

発症には飲酒や喫煙習慣との因果関係が認められます。その組織型は、我が国では大部分が扁平上皮癌です。症状は嚥下困難、胸骨後部痛、胸部不快感などで始まることが多く、確定診断は内視鏡下生検によってなされます。
治療法は、病期によって異なり早期のものでは内視鏡切除や外科的切除が中心となりますが、進行期のものでは放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)、さらにそれらを組み合わせた化学放射線療法が行われてきました。

近年、臨床病期II~IIIの場合には、術前化学療法によって予後が改善することが示され、標準治療と位置づけられています。
合併症などにより手術が難しい場合には化学放射線療法が行われます。進行例では、抗がん剤治療が治療の中心となりますが、がんによって食道の通過障害が認められる場合には放射線療法を併用する場合もあります。

使用される抗癌剤としては、5-FU、シスプラチン、ネダプラチン、ドセタキセル、パクリタキセルなどがあります。

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胃がん

胃がんの罹患は40歳代後半から上昇し60代に発症のピークがあります。
罹患率は男性では第1位、女性でも乳がん、大腸がんに次いで第3位です。部位別死因では全体で第3位と上位を占める疾患です。

胃がんの抗がん剤治療使用には2種類の方法があります。
ひとつは手術の後に再発を防ぐ目的で行われる術後補助化学療法です。通常、ティーエスワンという経口抗がん剤を1年間程度服用することにより再発の危険性を減らすことが確認されています。二つ目は転移があり進行した状態で発見された(切除不能胃がん)場合、または術後に再発してしまった(再発胃がん)場合です。
この場合には残念ながら、抗がん剤で完全にがんを治すことは大変難しいのが現状です。

しかし、新規抗がん剤の開発も進んでおり様々な治療法が開発されてきています。
この目的で用いられる主な抗がん剤は5-フルオロウラシル、シスプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセルとアルブミン懸濁型パクリタキセル)です。
効果が最もあり通常最初に行う治療は5-フルオロウラシル系薬剤であるS-1とシスプラチンもしくはオキサリプラチンを組み合わせた治療法です。

胃がんの約20%にHER2タンパクを過剰に発現することが報告されています。このような胃がん患者さんにHER2を抑制する分子標的治療薬(トラスツズマブ)を投与すると予後がさらに改善することが報告されています。

また近年、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブも治療効果が認められ使用できるようになりました。非常に長期間の治療効果を認める症例もありこの分野は今後期待されます。

当科ではまず胃がん組織を検査しこの薬剤が使えるか確認してから治療方針を決定いたします。

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大腸がん

大腸がんは生活習慣の欧米化に伴い急速に増加しており、その罹患率(2014年国立がん研究センター統計)は男性で3位、女性で2位、男女計で1位になりました。死亡率(2017年国立がん研究センター統計)も男性で3位、女性では1位、男女計で2位という位置づけになっています。大腸がんに対する抗がん剤の治療は、外科手術後に再発予防を目的に、また切除不能・再発あるいは転移のある場合に延命を目的に行われます。最近では、治療効果の改善から当初は切除不能例でも腫瘍の縮小が得られ、外科的切除が可能になる症例もあります。

大腸がんの抗がん剤治療は、この10年間に大幅に進歩し、生存期間の延長のみならず、治療中のQOL(生活の質)は明らかに改善しています。大腸癌治療で、まず使用される抗がん剤は、5-FU、オキサリプラチン、イリノテカンで、そこに分子標的治療薬剤である血管新生阻害剤あるいは、EGFR抗体薬を組み合わせる治療が行われます。従来、CVポートと呼ばれる皮下埋め込み型の中心静脈カテーテルを体内に埋め込み、46時間の持続的な薬剤投与が主流でしたが、最近では5-FUを経口薬に切り替えることにより、点滴時間の少ない、QOLを維持した治療が可能になっています。また、分子標的治療薬剤の使い分けに際しては、がんの発生部位や遺伝子診断に基づいた最適化が行われております。さらに2018年12月からはMSI-Hを呈する固形癌に、免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ)による治療が可能となり、遺伝子診断に基づいた治療選択が重要になっております。また、MSI-Hを呈する大腸癌は、リンチ症候群(遺伝性大腸癌)の病態として生じることもあり、当科では遺伝カウンセリングにも対応しております。

当科では毎週の科内カンファレンスのみならず、胃腸外科、肝胆膵外科と定期的なカンファレンス(キャンサーボード)を行い、最適な治療を提供します。

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膵臓がん

膵臓は胃の後ろ側にある細長い臓器です。消化液の分泌や、血糖値を調整するインスリンの分泌を行なう臓器です。膵臓がんの初期は症状が出にくく、早期発見は簡単ではありません。腹痛、背部痛、食欲低下、腹部膨満感、糖尿病などをきっかけに詳しい検査で診断されます。

治療法は、がんの広がりや全身状態などを考慮して、手術、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療の3つから選択していきます。がんが大事な血管を巻き込んでいたり、別の臓器に転移したりして手術ができない場合や術後に再発した場合に、当科が薬物療法を担当しています。

現在、膵臓がんで効果が期待できる化学療法は、FOLFIRINOX療法、ゲムシタビン+アブラキサン併用療法、ゲムシタビン単独療法、S-1単独療法などがあります。副作用と効果のバランスを考慮して、担当医とともに治療方法を決めていきます。痛みが強いときには、放射線治療を合わせて実施する場合もあります。また、膵臓がんは、がんが小さいうちから膵臓周囲のリンパ節や肝臓などに転移しやすい特徴があります。診断時から、がんによる症状や不安を和らげるための支持治療・緩和医療を並行して行っています。

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胆道がん

胆道は、胆のう・胆管を合わせたものです。胆のうは、肝臓でつくられる消化液の胆汁を一時的に貯めている臓器です。食事をすると胆汁は、胆管をとおって十二指腸に分泌されます。胆道にがんが発生し、胆汁の流れが阻まれると黄疸(皮膚や眼球が黄色になってくる)を来したり、便が白くなったりします。
腫瘍内科では、手術では癌が取り切れない場合や術後に再発した場合の薬物療法を主に担当しています。

胆管がんに対する化学療法として、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法が標準治療として確立しています。外来で週1回5時間程度かけて点滴し、2週連続で投与した後に3週間目は休薬します。また、S-1単独療法を行なう場合もあります。いずれも効果と副作用のバランスを考慮して担当医と相談して治療を進めていきます。

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肉腫

肉腫とは骨、筋、脂肪などに発生する悪性腫瘍で、いかなる部位にも発生します。
最も多く発生するのは、四肢、躯幹、後腹膜、および頭・頸部の骨・軟部組織です。

軟部肉腫には繊維肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、消化管間質腫瘍、骨の肉腫には骨肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫など、多くの種類があります。

治療は手術、放射線療法、化学療法があり、近年はそれらを組み合わせて行っています。化学療法で用いる薬剤には、ドキソルビシン、イフォスファミド、サイクロフォスファミド、ビンクリスチン、ゲムシタビン、ドセタキセルなどがあります。また、パゾパニブという分子標的薬やエリブリン、トラベクテジン等比較的新しく肉腫に用いられるようになった薬剤による治療も増えてきています。

消化管間質腫瘍では、イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブなどの分子標的薬を用います。軟部組織の肉腫ではこれまで一般的に化学療法の有効性は高くありませんでしたが、近年では分子標的薬剤の導入により、治療効果の改善が期待されています。

MSI検査を行い、適応となるタイプの方にはペンブロリズマブ(抗PD-1抗体薬)の投与も行います。

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神経内分泌腫瘍

神経内分泌腫瘍は全身のどの臓器にも発生しうる悪性腫瘍です。
自覚症状は発生部位や腫瘍の性質により異なります。特に全体の約3分の1を占める、ホルモンを産生するタイプのものは自覚症状が出やすくなります。インスリンを産生すればインスリノーマと名前が変わり、低血糖の症状が出ます。ガストリンを産生すればガストリノーマと名前が変わり、胃潰瘍による心窩部痛等が生じます。

そのほかにもグルカゴン、VIP、ソマトスタチン、セロトニンなどのホルモンを産生するタイプもあります。生じる自覚症状に対しては対症療法を中心に治療します。

一方、神経内分泌腫瘍は悪性腫瘍ですので腫瘍そのものへの治療が最も重要です。
早期であれば(遠隔転移や手術不能となる周囲臓器への浸潤が無ければ)外科的手術を行います。神経内分泌腫瘍は進行が緩やかであるものも少なくないため、肝臓への転移を有する場合でも外科的手術を含む局所療法が検討されます。しかし、局所療法が不能の場合は、薬物による治療を行います。

神経内分泌腫瘍は腫瘍の分裂速度(増大速度)により投与する薬剤が異なります。
分裂能が低いタイプには従来内分泌症状に対する治療薬として用いられてきたソマトスタチンアナログが増殖抑制効果を示すことが知られています。その他にも、ストレプトゾシンという抗癌剤やエベロリムス、スニチニブなどの分子標的薬剤が投与され、一定の効果が認められています。

分裂能が高いタイプは神経内分泌がんと呼ばれ、その場合はシスプラチン+エトポシドまたはシスプラチン+イリノテカンという抗癌剤治療が主に行われています。

当科では年間約20例の神経内分泌腫瘍の治療に当たっています。もし薬物療法が必要な神経内分泌腫瘍と診断を受けた場合は、ぜひご相談ください。

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頭頸部がん

頭頸部がんは、頭蓋から頸部に発生した悪性腫瘍です。その多くが扁平上皮癌であり、喫煙、飲酒といった共通のリスク因子を有している一方、中咽頭がんはヒトパピローマウイルス、上咽頭がんはEVウイルス感染が発がんに関与しています。頭頸部癌の特徴として、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などの感覚や呼吸、発声、嚥下などの重要な機能に関係することがあげられます。そのため、治療は、治療効果とQOL(生活の質)保持のバランスを考え行う必要があります。当院では耳鼻咽喉科、放射線治療科、腫瘍内科、形成外科、歯科口腔外科から成る頭頸部キャンサーボードを催し、病期に合った最善の治療を提供するよう取り組んでいます。当科の担当する薬物療法は、手術不能の局所進行例に対して放射線治療との併用で、また遠隔転移を有する進行再発例に対して行われます。セツキシマブ、5-FU、シスプラチン、パクリタキセル/ドセタキセルなどの薬剤が使用され、さらに、2017年3月に免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブも保険承認され、標準治療として使用されております。免疫チェックポイント阻害薬を用いた臨床試験も盛んに行われております。

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腎がん

成人の腎臓に発生する悪性腫瘍のうち腎がんは最も頻度が高く、85-90%を占めます。50歳代から70歳代にかけて高齢ほど多く発生し、男性は女性より約2倍多く発症します。

喫煙、肥満、高血圧、慢性透析、von Hippel-Lindau病などが危険因子として知られています。緩やかに進行するものから急速に悪化するものまで、様々な予後をたどります。
古典的3主徴として疼痛、血尿、側腹部腫瘤が挙げられますが、それらが揃うケースは全体の10%程度で、多くは健康診断で偶然発見されます。

早期腎がんの治療は手術療法が原則であり、腎周囲の脂肪組織と副腎を一塊にして摘出する根治的腎摘除術が標準術式ですが、腫瘍が小径である場合には腹腔鏡やロボット補助下での腎部分切除が行われることもあります。遠隔転移を伴う進行腎がんでは化学療法、特に分子標的薬による治療が行われます。チロシンキナーゼ阻害薬のスニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、またmTOR阻害薬のエベロリムスやテムシロリムス、血管新生阻害薬のベバシズマブが用いられます。近年では免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブの有効性が示され、標準治療に組み込まれました。さらには未治療の腎がんに対するニボルマブとイピリムマブの有効性も示され、免疫チェックポイント阻害剤の重要性がさらに高まっています。

これらの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤にはそれぞれ特徴的な副作用があり、うまく治療を続けるにはその管理が大変重要です。治療の適応と考えられました際には、薬物療法の専門家である私達にぜひご相談ください。

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原発不明がん

原発不明がんは全身の詳しい検査を行っても原発巣が特定できない転移性の悪性腫瘍です。

原発不明がんは全悪性腫瘍の数%を占めると報告されており、稀ながんというわけではありません。ただ、現在のがん治療は原発臓器に基づいて治療方針が決定されるため、原発臓器が特的出来ない「原発不明がん」は治療方針の決定が困難です。

従って、できるだけ原発臓器を推定できる様、詳細な検査を行います。
当科では病理部、放射線科と密接に連携を取り、原発臓器の推定を行うとともに、最適な治療法の選択を行っています。

腫瘍内科は臓器によらず、様々ながんの治療に精通しているため、原発不明がんの診療に最も適した診療科といえます。

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造血器腫瘍

造血器腫瘍には悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫など様々な悪性腫瘍があります。
それらの中で最も発症数の多い疾患が悪性リンパ腫で、全国で年間2万人以上の発症があります(がんの統計‘13、公益財団法人がん研究振興財団)。

私たちの科では、固形腫瘍の患者さんの診療をしておりますが、造血器腫瘍の中では主に悪性リンパ腫の患者さんが対象となります。大学病院ならではの利点を生かし、PETやフローサイトメトリー、染色体検査、専門の病理医と連携した迅速で正確な診断が可能です。
また、治療では化学療法、放射線療法、そして分子標的療法(リキシマブ)、抗PD-1抗体薬等の集学的治療を行っております。

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乳がん

我が国の女性の乳がんは、30歳代から増加をはじめ、40歳代後半から50歳代前半でピークを迎えます。女性が患うがんの中で最も多いがんであり、年々増加傾向にあります。

発症の危険因子としては、乳癌の家族歴、乳腺増殖性疾患の既往、早い初潮、遅い閉経、遅い第1子出産、少ない出産回数、ホルモン補充療法、肥満、高脂肪食、アルコール摂取などがあり、症状としては、腫瘤触知、疼痛、異常乳頭分泌物、浮腫、発赤、変形があります。

乳がんの治療法には、他の癌同様、手術療法、放射線療法、薬物療法があります。
その中で、薬物療法は、術前化学療法、術後化学療法、転移性乳がんに対する治療としてなされており、年齢、閉経状況、原発巣、転移巣におけるホルモン受容体とHER2タンパクの発現状況によって、ホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療薬の3種類を用いて治療法が選択されます。

近年、さまざまな新薬、特に分子標的治療薬が開発、使用できるようになり手術後の生存率や再発乳がんの治療成績も飛躍的によくなってきています。HER2陽性乳がんではペルツズマブ、T-DM1が、ホルモン受容体陽性乳がんではCDK4/6阻害薬使用可能となり、高い治療効果が期待できるようになってきています。また、BRCA遺伝子変異陽性の乳がんに対してはPARP阻害剤が使用できるようになりました。

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クリニカルシークエンス検査・個別化医療

がんの遺伝子を網羅的に調べることで、それぞれの変異に応じた治療が可能になる場合があります。腫瘍内科では、臨床としてがんの網羅的遺伝子検査(がんクリニカルシークエンス検査)を行うとともに、遺伝子の発現解析や生殖細胞系列の解析にも踏み込んで、より個人に合わせた治療「個別化医療」を実現するべく研究を行っております。行っている検査の内容や、個別化医療の詳細については東北大学病院個別化医療センターのHPをご参照ください。

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